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7月5日
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ベートーヴェンの最後の

ピアノソナタを集めていることを

以前の絵日記でも書きましたが、

今はさらにエスカレートしています。

最初の動機は、好きな曲の

最も気に入った演奏を探し出す

ことでしたが、途中から目的が

変わりました。

 

絵の世界と同じで、演奏家も

“名が売れている”ということは

重要です。

しかし!“絵の世界と同じで!”

名が売れている演奏家の演奏は

本当に素晴らしいのか、という

ことを検証してみたくなったのです。

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私も普段、ラジオなどで初めて聞いたクラシック音楽のCDを買いに行ったとき、名の知れた演奏家の中からCDを選んで買います。

曲を聴くのさえ初めてなのだから、誰の演奏がいいかわからないし、何度も買い直したくないので、名の通った人なら無難だろう、という心理です。

 

しかし、ちょっと待ってください。絵描きが毎年何百人も美大を卒業するこのご時世、ピアニストだってそれ以上に音大を卒業している筈です。

しかも絵描きと違ってクラシックの演奏家は素材(曲)が世界共通ですから、毎年星の数ほど現れる世界中のピアニストと競争せざるを得ません。

有名コンクールで上位入賞して名を売ることが十分にできなかった人たちは、今いったいどうしているのでしょうか。

コンクールに入賞しなかったからといって、必ずしも魅力のない演奏しかできない人達ばかりではないでしょう。

私は予備校講師時代に魅力的な絵を描くのにもかかわらず、試験本番の6時間に実力をだせずに、他の道に進んだ人を何人もみました。

そういう人たちの姿を思うと、(自分の姿も重ね合わせ)コンクール上位入賞者や美貌で名を売っている人たちの演奏ばかり聞いていていいのか、

そんな思いに駆られるわけです・・・。

 

もうひとつ、理由があります。先日ニュースで、独自の品揃えを誇っていた有名書店が閉店する、という話題をみました。

店員のこだわりで(売れている、いないに関わらず)読んでほしい本を揃える本屋の閉店です。 背景にはネット経由での購入者が増えている

こともあるのでしょうが、最近の本屋の客は、売上ランキング上位の本しか買わない傾向が強い、という事情があるそうなのです。

先の私のCDの買い方と同じで「無駄な買い物をしたくない」から無難にみんなの読んでいるものを買う、という心理だそうです。

 

しかし、ちょっと待ってください。みんなが売上ランキング上位の本しか読まなかったら、誰もが同じような発想や感性しか形成しない、という

ことでしょうか。それは文化の成熟とは反対の方向へ向かっているとしか思えません。そんなことじゃいけません。

くだらない本とか、やたら難解な本とか、他の人は読まないんじゃないか、というような本をあえて読む、という楽しみもあるはずです。

そこでは、「こんなの買うんじゃなかった」という確率が確実に増えますが、「ああ、こんなことにこだわる人もいるんだ」という

価値観の多様化といいますか、視野が広がる助けになることが眠っているはずです。その接点を失うことは、大きな損失に思えます。

「それなら、私なりのランキングを作ってしまえ・・・」(名が売れてるくせにショボイ演奏だったら採点厳しいぞ)という訳です。

 

しかし、そろそろ資金も底をついてきました。初めはお気に入りの数枚を確認したら残りはヤフオクにでも売って4〜5割は(資金を)回収しようと

思っていたのですが、これだけ同じ曲を集めると、曲より演奏家の人がみえてきて“手放せない!”のです。

「きっと君にもいいところがあるはずだよね」とか思って、何ヶ月か後に聴いたら、今は感じられない何かが感じられるかもしれないじゃないですか。

 

そんなこんなでグダグダやっている今日この頃でございます。